人工血管内シャント(AVG) 流出路静脈の頻回狭窄例に対するゴア® バイアバーン® ステントグラフト留置時および術後管理において、エコーが有用であった一例
症例のポイント
本症例は、AVG 流出路静脈病変に対して頻回のPTAを施行している。また、2度にわたって人工血管の静脈側延長術を施行している。すでに人工血管は腋窩静脈に近い尺側皮静脈に吻合されており、さらなる人工血管延長術は困難と考えられた。また、単なるバルーン拡張では、これ以上の開存が見込めないため、ゴア® バイアバーン® ステントグラフト(以下、VIABAHN)留置の良い適応と考えられた。また、デバイスのサイジングや位置決め、および術後経過における超音波の有効性についても検証した。

症例
- 60代女性
- 1型糖尿病性腎症で2004年血液透析導入
- VIABAHN留置までの経過
- 2008年 上腕動脈を表在化しバスキュラーアクセスとして使用
- 2017年10月 返血の穿刺困難となり、左腕に人工血管移植 ゴア® プロパテン バスキュラーグラフト (内径4-6 mm テーパータイプ)を使用
- 2018年 流出路静脈狭窄に対するPTA3回・静脈側人工血管延長術1回
- 2019年 流出路静脈狭窄に対するPTA5回・静脈側及び動脈側人工血管延長術1回
- 2020年 流出路静脈狭窄に対するPTA2回
- 2020年8月 工血管の血栓性閉塞を確認
手技
血栓除去+バルーン拡張: 人工血管を切開し、エコーガイド下にて4 Fr血栓除去カテーテルを用いて人工血管内の血栓を除去した。血流再開後のエコーで人工血管流出路静脈の高度狭窄を認めたため、人工血管に6Frシースを挿入して血管造影で確認したのち(図1)、6 mmのコンクエスト®*を用いて病変部を拡張した。最大30気圧まで加圧し、バルーンの完全拡張を得たが、PTA 後の血管造影でエラスティックリコイルを認めた(図2)。


VIABAHN留置: まず、エコーを用いて人工血管と静脈の吻合部及び、病変部遠位端の皮膚にマーキングした。その距離は3.0 cmであった。デバイスの近位端を人工血管静脈吻合部の1 cm人工血管寄りとし、狭窄の遠位端の1 cm中枢まで留置するため、5 cm長を選択した。また、デバイス近位端の人工血管内径がエコーで5.0 mmと測定されたため(図3)、6 mm径を選択し、6 Frシースから0.018 インチガイドワイヤー (V-18™ Peripheral Guidewire**)で狭窄部を通過させた。皮膚にマーキングした位置をエコーで確認して、その部位にデバイスの遠位端を位置させた(図4)。エコーおよび透視で位置がずれないことを確認しながらVIABAHNを留置した。エコーにて近位端は人工血管内に1 cm ランディングできたことを確認した。VIABAHN 留置後、6 mmバルーンを用いて、nominal pressure で後拡張し、最後に血管造影を施行。狭窄部が良好に拡張したことを確認して、手技を終了とした(図5)。なお、VIABAHN 留置直後は、エコーで内腔を確認することはできなかった。



留置後の経過
VIABAHN 留置2週間後にエコーで精査したところ、内腔の血流を確認することができた(図6)。人工血管側のエッジにごく軽度の狭窄を認めたが、ステントグラフト内には狭窄を認めなかった。留置後4か月のエコーで、人工血管内に狭窄を認めたため、PTAを施行したが、VIABAHN 留置部には狭窄は認めなかった。

考察
AVGの最大の問題は、人工血管の流出路静脈の狭窄である。狭窄部には内膜肥厚がみられるが、その原因は、人工血管と静脈のコンプライアンスミスマッチ、人工血管からのジェット流による静脈へのシェアストレス、乱流によるものと考えられている。この狭窄に対しては、バルーンを用いた血管拡張や人工血管を用いた静脈側の延長術が選択されてきた。本邦では適応外使用であるにもかかわらず、ベアメタルステント (以下、BMS)ではある程度の開存率を改善させる可能性も示唆されており、医師の判断で使用されてきた。しかしながら、長期的にはBMS内に内膜肥厚を生じ、PTAを繰り返さざるを得なくなるという報告もある。また、人工血管による静脈側の延長術は手術侵襲が高いという問題がある。VIABAHNは、ePTFEで病変部をカバーするため、BMSで生じるような内膜肥厚をきたしにくい。そのため、頻回の狭窄をきたす病変であっても、長期の開存が期待できる。また手術侵襲は極めて低い。本症例は、2回の人工血管延長術を施行したにもかかわらず、2~3か月に1回のPTAを要していたため、VIABAHN留置の良い適応と考えられた。
VIABAHNは、人工血管に1 cm以上ランディングさせることが推奨されている。血管造影では、人工血管と静脈の接合部は不明瞭であるが、超音波では吻合部を確実に描出することができる。また、VIABAHNが留置される中枢側の静脈の部位の皮膚にマーキングすることで、デバイス長を決定することが可能となる。デバイス径は、ステントグラフトのランディング部位の人工血管内径を基準にして決めるが、エコーで測定すれば、より正確に直径を評価できるという利点がある。
留置直後はエコーでVIABAHNの内腔を描出できないが、留置2週間後には、内腔の血流を確認できる。当院では、人工血管を留置した患者を定期的にエコーで精査して、管理しており、ステントグラフト内を観察できることは、大きな利点である。VIABAHN留置6か月の時点で、ステントグラフト内の内膜肥厚はほとんど見られない。
* 販売名:コンクエスト PTAバルーンカテーテル 承認番号:22000BZX00795000 製造販売元:株式会社メディコン
** 販売名:V-18ガイドワイヤー 承認番号:21600BZY00361000 製造販売元:ボストン・サイエンティフィック ジャパン株式会社
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販売名:ゴア® バイアバーン® ステントグラフト
承認番号:22800BZX00070000
一般的名称:ヘパリン使用中心循環系ステントグラフト