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はじめに

近年、末梢動脈疾患(PAD)に対する血管内治療(EVT)の進化が著しい。バイアバーン® ステントグラフトは、浅大腿動脈(SFA)領域における複雑病変(長区間閉塞や石灰化)で、臨床成績が報告されている1-6。FPバイパスも執刀する心臓血管外科医として、バイアバーン® ステントグラフトに対する見解を記したい。

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柴田 豪 先生 札幌医科大学附属病院

バイアバーン® ステントグラフトのデータ

バイアバーン® ステントグラフトに関するJapanese Multicenter Trial1 のデータは我々の予想を上回る良好な成績であった(平均病変長21.8 cmで1年の開存率が88-92 %)。ただ、このデータは治験によるものであり、また、病変背景の中で、TASC II C病変が多く含まれたデータであることを認識しておく必要がある。

リアルワールドのデータとして発表されたDr. lidaらの前向き多施設研究2では、平均病変長26 cm、CLTI 25 %、CTO 71 %、高度な石灰化であるPACSS grade 3/4が43 %含まれた病変背景において1年時一次開存率が80.3%という結果であった。治験データからは約10 %劣るものの病変背景から見ると理解しうるデータと考える。

その他FPバイパスとの比較3や閉塞した人工血管経由のデータなどもあり、SFA治療におけるバイアバーン® ステントグラフトの効果は、さまざまな複雑病変で報告4-6されている。 

チャレンジングポイント

CFAを含むSFAの長区間超高度石灰化閉塞病変に対し、外科的内膜摘除+バイアバーン® ステントグラフト留置の方針で治療に入った。

患者背景・病変背景

  • 年齢:66歳
  • 性別:男性
  • 対象病変部位:左SFA入り口部からの長区間超高度石灰化閉塞病変
  • 症状:200 m程度の跛行症状

実際の治療

局所麻酔、仰臥位で手術開始した。
右鼠径から6 Frガイディングカテーテルを挿入しcross over で施行した(図1)。
左鼠径を斜切開しCFAを露出した。動脈前面を縦切開し内腔を確認。石灰化した内膜を摘除したのち direct suture で閉鎖した。

左SFAは高度な石灰化で、distal SFA puncture でretro grade wiringを施行しても wire cross できず、antegrade より下肢動脈狭窄部貫通用カテーテルを使用しwire crossに成功した(図2)。

その後バイアバーン® ステントグラフトの留置を試みた。バイアバーン® ステントグラフトをdistal に径6.0/長150 mm、proximal に径6.0 mm / 長250 mmを留置し、径6 mm / 長150 mmのバルーンで後拡張し、アンギオとIVUSにて良好な開存を確認した後、手技を終了した(図3)。

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図1 右鼠径から6 Fr ガイディングカテーテルを挿入しcross overで施行
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図2 石灰化に弾かれ、retro wireとkissingできない
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図3 アンギオとIVUS にて良好な開存を確認

使用デバイス

ガイディングシース: 6 Fr 45 cm
ガイドワイヤ: 0.014 inch、長235 cm
前拡張バルーン: 径3 mm / 長40 mm→径6 mm / 長150 mm
ステント:バイアバーン® ステントグラフト  
       径6 mm/長250 mm、径6 mm/長150 mm
後拡張バルーン: 径6 mm / 長150 mm
その他:IVUS、下肢動脈狭窄部貫通カテーテル

留置後のフォローアップ

ABIの変化 左 術前0.45→6M 1.01
DUS フォローアップ 再狭窄なし

コメント

SFA入口部から閉塞している長区間超高度石灰化の症例に対し、外科的内膜摘除術とEVTにてバイアバーン® ステントグラフト留置し、6か月間フォローした症例を経験した。

バイアバーン® ステントグラフトの治験や過去の報告2からも、バイアバーン® ステントグラフトをヘルシーランディングし、病変をフルカバーすることによって良好な成績が示されていることから、今回の症例においても、SFAのproximal にはステントのランディングゾーンがなく、外科的内膜摘除術を行うことでヘルシーランディングを可能とし、またIVUSと造影にて病変確認をしっかり行いながらフルカバーし留置することができた。またバイアバーン® ステントグラフトの特性からステント展開時にマイグレーションを起こしにくく、ステントエロンゲーションも生じにくい設計であるため、ストレスなく留置することができると感じている。

さらに今後解明を期待したい点は、バイアバーン® ステントグラフト留置後の血栓性閉塞時の再治療についてである。閉塞時の形態がその他の血管内治療デバイスと印象が異なりグラフト内の全長にわたる閉塞で、多量の血栓成分を含む閉塞であり、再治療方法も、本稿の執筆時点において、本邦ではまだ標準化されていない。自身は、これまでにバイアバーン® ステントグラフト留置後に閉塞した症例を、4例経験している。バイパスへconversion した症例、血栓吸引+ステント留置した症例、外科的血栓除去とPOBAを施行した症例等があり、うち2例は1年以上の開存を維持することができた。これらのバイアバーン® ステントグラフト留置後の閉塞は、多量の血栓成分を含む閉塞であったので、血栓の処理には十分注意が必要であると考える。また、私自身は試したことがないが、カテーテルを留置し持続的な経動脈的血栓溶解療法が有効との報告もある7。いずれにせよ、EVTで完結させるなら、血栓成分の量の多さからも、吸引カテーテルだけでは十分な吸引が難しく、吸引カテーテル治療に加えて血管内治療あるいは、血栓溶解療法が必要ではないかと考える。

治療前後の造影動画


  1. Ohki T, Kichikawa K, Yokoi H, et al. Outcomes of the Japanese multicenter Viabahn trial of endovascularstent grafting for superficial femoral artery lesions. Journal of Vascular Surgery 2017;66(1):130-142.e1.
  2. lida O, Takahara M, Soga Y, et al; VANQUISH Investigators. One-year outcomes of heparin-bonded stent-graft therapy for real-world femoropopliteal lesions and the association of patency with the prothrombotic state based on the prospective, observational, multicenter Viabahn Stent-Graft Placement for Femoropopliteal Diseases Requiring Endovascular Therapy (VANQUISH) Study. Journal of Endovascular Therapy 2021;28(1):123-131.
  3. Reijnen MMPJ, van Walraven LA, Fritschy WM, et al. 1-year results of a multicenter randomized controlled trial comparing heparin-bonded endoluminal to femoropopliteal bypass. JACC: Cardiovascular Interventions 2017;10(22):2320-2331. open access http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1936879817319775
  4. Saxon RR, Chervu A, Jones PA, et al. Heparin-bonded, expanded polytetrafluoroethylene-lined stent graft in the treatment of femoropopliteal artery disease: 1-year results of the VIPER (Viabahn Endoprosthesis with Heparin Bioactive Surface in the Treatment of Superficial Femoral Artery Obstructive Disease) trial. Journal of Vascular & Interventional Radiology 2013;24(2):165-173.
  5. Lammer J, Zeller T, Hausegger KA, et al. Heparin-bonded covered stents versus bare-metal stents for complex femoropopliteal artery lesions: the randomized VIASTAR trial (Viabahn endoprosthesis with PROPATEN bioactive surface [VIA] versus bare nitinol stent in the treatment of long lesions in superficial femoral artery occlusive disease). Journal of the American College of Cardiology 2013 62(15):1320-1327. https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0735109713025941
  6. Zeller T, Peeters P, Bosiers M, et al. Heparin-bonded stent-graft for the treatment of TASC II C and D femoropopliteal lesions: the Viabahn-25 cm Trial. Journal of Endovascular Therapy 2014;21(6):765-774.
  7. Golchehr B, Lensvelt MMA, Fritschy WM, et al. Outcome of thrombolysis and thrombectomy for thrombosed endografts inserted in the superficial femoral artery for occlusive disease. Journal of Endovascular Therapy 2013:20(6):836-843. 

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販売名:ゴア® バイアバーン® ステントグラフト

承認番号:22800BZX00070000

一般的名称:ヘパリン使用中心循環系ステントグラフト