症例のポイント
人工血管内シャントの静脈側吻合部狭窄は日常よく経験する。治療はPercutaneous Transluminal Balloon Angioplasty (PTA)を行うのが一般的であるが、強いリコイルを生じた場合は initial gainが得られず、長期開存もほとんど期待できない。このような症例に対してゴア® バイアバーン® ステントグラフトを使用することで十分なinitial gainと長期開存を期待することができる。本稿ではゴア® バイアバーン® ステントグラフトの適応と留置における手技上のポイントを解説する。

患者背景・病変背景
- 41歳 男性
- 病歴:左前腕の人工血管内シャント静脈側吻合部狭窄による静脈圧上昇・シャント音減弱のため加療目的で当科紹介となった。
- 既往歴:IgA腎症 アトピー性皮膚炎 気管支喘息
- 透析歴:13年
2年前に左前腕に6 mm径の人工血管を用いた内シャントが作製され、以後、5回のPTA歴と1回の修復歴(シャント感染)をもつ。
ゴア® バイアバーン® ステントグラフト選択の理由
約1か月前に同部に対するPTAを行った既往があり、早期再狭窄症例であった。この時点でバルーン拡張後の病変のリコイル所見によってはゴア® バイアバーン® ステントグラフトを留置する方針とし手技に臨んだ。
手技
人工血管に 5-0 ナイロンでマットレス縫合をかけてその中心部を穿刺しシースを挿入して造影(図1)を行ったところ、人工血管 - 静脈側吻合部に有意狭窄を認めた。0.018 インチガイドワイヤー を通過させ同部をPTA バルーンカテーテル(カッティング型)でwaist が消失するまで拡張し狭窄を解除した(図2)。バルーン拡張術後の造影で同部のリコイル所見を認めた(図3)ため、ゴア® バイアバーン® ステントグラフト 7 mm 径× 50 mm 長を展開し、PTAバルーンカテーテルで後拡張を行った。最終造影でゴア® バイアバーン® ステントグラフトの良好な拡張(図4)を確認し、シースを抜去して先のマットレス縫合を結紮して手技を終了した。
結果、術後経過
術後82日目に人工血管内狭窄を認めたため同部のPTAを行ったが、ゴア® バイアバーン® ステントグラフト周囲の狭窄所見はなく、現在8か月を経過しているがゴア® バイアバーン® ステントグラフト周囲の狭窄はなく開存している。
考察
2020年6月からゴア® バイアバーン® ステントグラフトが人工血管内シャントの静脈側吻合部狭窄の治療に保険適用されたことで、強いリコイルを生じる今回のような症例でも良好なinitial gain とともに長期開存を得ることが可能となったと考えている。手技的にもゴア® バイアバーン® ステントグラフトは正確な位置決めが容易で、今までステント留置を行ったことがない方でも容易に留置できると思われるが、重要なことは症例の選択とサイジングであると考えている。我々は、症例の選択においては短期間の再狭窄症例あるいは強いリコイル症例に限定しており、明らかな責任病変を特定しないまま保険適応内であるからという理由で安易にゴア® バイアバーン® ステントグラフトを留置しないようにしている。サイジングについては、流出静脈に対してオーバーサイズのゴア® バイアバーン® ステントグラフトは開存率を低下させる懸念がある。もともと留置された人工血管径は参照できない(人工血管内腔には仮性内膜ができていることが多い)ことに注意し、透視上でPTA バルーン径や長さを参照として正確にサイジングを行って、流出静脈よりも小さめのステントグラフトを選択している。ただし、流出静脈のサイズと開存率の関連についてはエビデンスレベルが低いため、今後のさらなる検討を待ちたい。
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販売名:ゴア® バイアバーン® ステントグラフト
承認番号:22800BZX00070000
一般的名称:ヘパリン使用中心循環系ステントグラフト